あの人の ぬくもり恋し 夕の風 へんちゃか ぺんちゃか
おお、ご無沙汰してしまったのう。
こう見えても(だから見たことないってば。あなたの正体はいったい?)わしも忙しくてのう。すまんことしたのう。さてとじゃ、おぼっちゃまの初のラジオ番組『ユズリンの音楽日記』、聴いてくれたかいのう?放送直後、たくさんの感想が届いたそうじゃよ。現代は電子メールとかっちゅうもんがあって、はあ、便利じゃのう。中学生から大人まで、ほんにありがたいことじゃ。どうか、その声をSBSまで届けてくれぞなもし。そうすれば、もっと番組回数が増えるかも…じゃ!なぬ?それって組織票じゃないかって?ずばり、そのとおり!それでいいのじゃよ、うっひょっひょ。
ああ、またまたひと月以上も空けてしまいました。ごめんなさいね。いろいろとですね、こんなかわいいだけのおぼっちゃまでも、考えることがありまして…、悩むことがありまして…、それでも痩せないのでありまして…。季節は秋だし、滅入っていたのでありました。しかし、まあ、なんとかなるさ!の気持ちで乗り越えますので、ご安心を。え?何も心配してないって?あんたは脳天気だからって?う〜ん、当たっているかも。
秋、まさにコンサートに集中できる季節なんですねえ。体育館も、窓を開ければ気持ちの良い風が入ってくるしね。ただ、最近は近所迷惑にもなるから(音がうるさいって)、気をつけているんですよ。運動場側は開けるけど、民家のそばの方は閉めるってね。細かい配慮が必要なんですよ、これでも。
北海道の帯広の小学校から始まった秋。印象深い学校ばかりです。
若い先生が4月から歌に取り組みはじめ、学校中を動かしました。終了後の言葉、「私自身が子ども達と歌ったり踊ったりすることが、楽しくて楽しくて。やって良かったです。」こちらの方が励まされました。
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体育館に大きな紙。そうです、模造紙を8枚もつなげて、歌の歌詞を書いてくれてある学校もありました。しかも、文字は子ども達が毛筆で書いてくれていたんですよ。絵まで描きこんでね。歌がふくらみました。
バンドで一緒に盛り上げてくれる学校もありました。教員ダンスチームを結成してくれた学校もありました。忙しいでしょうに、全校でコンサートに向けて取り組んでくださったんですね。もう頭が下がります。
さてさて、そんな秋風の中、長崎県諫早市のとある小学校に、わくわくしながらうかがいました。初めての長崎県の小学校ということもあるのですが、学校からの依頼内容が胸ときめかす原因だったのです。それは、校長先生じきじきの文章でした(あ、間違えても特急「白いかもめ」に乗れるからわくわくしたんじゃないからね……乗ったけど)。
「毎週の朝の集会で話すこと、あれこれ悩むんです。心の教育が強く叫ばれている今日ですが、生命の大切さなどについて、校長講話という形ではなかなか子ども達の心に響いていかないと感じ、歌を通して語りかけていこうと、私の下手なギター伴奏で歌ってきました。そんな時、ユズリンの歌に出会いました。前任校から今年で6年目になりますが、ずっと歌い続けています…。」
スタートライン・きみとぼくの間に・けっこういいよね・あきらめないで自分を・芽吹く季節・明日を夢見て…。こんなにたくさんの歌を子ども達と響かせてくれた校長先生の熱意に感動し、出かけました。どこか、青年教師という雰囲気が満ちている先生で(背筋がぴしっとしていて、目が輝いているんですよ)、もちろん、コンサートでは一緒にギター伴奏をしてもらって、『明日を夢見て』を歌ってもらいました。すると、校長先生が歌い始めたら、学校中が応えるように合わせはじめたのです。僕もおお〜っと思いましたが、校長先生も、本当に気持ちよさそうに、ますます声を張り上げて歌い続けたのです。でも校長先生の目、心なしかうるんでいたような…。
実は、コンサート中にこんな事があったんです。
2曲目に『スタートライン』を歌った時のことです。子ども達も、どんどん歌ってくれたんです。目をキラキラさせて、楽しそうに響く良い声でね。その瞬間です!体育館の横のドアから、そっと外に出る人影が見えたんです。え、誰?こんな良い時にはずれるのは?と思いながら、ちらっと横目で見たら、なんとそれは校長先生だったんですねえ。あれ?なんで外に出ちゃうの?本物の僕に会ったら、こんなお馬鹿な奴だったので「やっぱり、会わなければ良かった。CDだけにしておけば良かった。あ〜あ」って後悔しているのかなあ、と心配になってしまいました。でもコンサートははじまっているので、よそに気を取られている暇はありません。今は、目の前の子ども達と真剣に向かい合う時です!(よっ、さすがおぼっちゃま!)というわけで、全力でコンサートを終える頃には、そんなできごとさえ記憶から消えようとしていたのでありました。
終了後、同行していた例の「もう予算がないから」のあの人が、教えてくれたのでした。
「スタートラインの時に、校長先生外に出ただろ? 泣いていたんだよ……。」
えっ?
そうだったんだ。初めて、その行動の意味を知らされたのでした。
「あの時さ、ユズリンが校長先生を見なくて良かったよ。あんたのことだから、つられて泣いちゃって歌えなくなるからね。」
いつまでも、子ども達を胸の真ん中に置いている校長先生。
いいなあ、いいなあって叫びたいくらいでした。離島の学校に勤めたくて、わざわざ関東から長崎県の試験を受けたんだそうです。こんな校長先生がいてくれる……これだけで嬉しいおぼっちゃまなのでした。
この先生以外にも、素敵な校長先生にいっぱい出会っています。
仕事があって、校長室から出られなかった先生、あまりにも子ども達の大きな声に、とうとう我慢できずに体育館に来てしまいました。おそらく、ちょっと見て戻るつもりだったんだと思います。が、二階席から、とうとう最後まで見ていてくれたのでした。
あまりにも話がはずんでしまい、なんと特急の止まる遠い駅まで、自らの運転で送ってくださる校長先生もいました。
昨年の暮れに、ホールでのコンサートを見てくれたのがきっかけで、呼んでくださった校長先生も。開演前に校長室で言われました。
「子ども達の心を 思いっきり開いて発散させておくれ。」
コンサートの最後に、全校の前で感想をくださった校長先生もいらっしゃいました。
「この2〜3日、風邪で具合悪くて、途中で失礼しようと思いましたが、離れられませんでした。風邪も治ったようです。本当に、歌っていいですね。」
「体育館の天井が落ちんばかりの歌声。子ども達も心を開きましたが、職員室での表情の爽やかなこと。ああ、いつもこんな顔で、心で、子どもらの前に立てたら、と感謝です。」
この葉書をくださった校長先生とは、なんと3回目の出会いなんですよ(よくも飽きずに聞いてくださって、こちらこそ感謝です)。
そして、この頃なぜか、お昼をくださるんです。給食だったり、店屋物をとってくださったり。前もっての準備ではないはずです。それなのに、スタッフの分まで用意してくださるんです。う〜ん、やっぱかわいいから?(違う、違う!)
さきほどの諫早の校長先生、帰る時に近所を案内してくださいました。コスモス畑にです。諫早湾が見下ろせる山に広がるコスモス畑。その学校の子ども達も種を蒔いたそうです。予想をはるかに超えるほどの広さでした。あれこれ考えながら、コスモスと諫早湾を見つめていました。
自分が教員時代は校長先生とも話す機会は少なくて、多少ならずとも怖いイメージしかなかったのですが、こうして違う立場になってみると、見えてくるものがあるんですね。校長先生も、担任の先生も夢を持ち続けている。そして、その夢が少しでも現実になっていく。捨てたもんじゃないよね〜、まだまださ!よ〜し、ふさぎこんでいないで、いつもの変なおぼっちゃまとして、はりきって歌うぞ〜!みなさん、呆れずについてきてね。
長崎では、短い時間を有効に、食べ歩いたそうじゃよ。
おぼっちゃまは餃子が好きでのう。また、おいしい店を発見したようじゃ。写真をたよりに、あんたも行ってみなされ。思案橋近辺らしいのう。ひとくち餃子で、何十個も食べられるようじゃて。
ほうじゃほうじゃ、長崎でのホールでのコンサートには、まいったんじゃと。アンコールの時に、おくんちの言葉で何回も「もってこ〜い」と言われ続け、なんと2回もその声に応え、長いコンサートになったそうじゃよ。まったく、お調子もんじゃのう、おぼっちゃまは。ほんだば、またのう。風邪ひかないようにのう。
思うように 生きていくのは 大変じゃ へんちゃか ぺんちゃか
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