「うちの学校はどうですか?」
校長先生に、よく聞かれる質問です。
「どの学校の子ども達も、みんな同じですよ。」
これが僕の答えです。
校長先生、ついついよその学校が気になってしまうんですね。これは、元教員としてはせつないほど理解できます。比べなくてもいいのに…、比べてはいけないってわかっていながらも。人間の悲しい性でしょうか? 現実の社会を縛っている価値観のせいでしょうか? どうしても比較したくなってしまうんでしょうね。でもね、僕にとっては、どこの小学校の子ども達も笑顔がすてきで、まぶしいほどです。生命の輝きっていうのかな? それが見えるから、どんなに仕事続きの毎日でも、元気いっぱいになれるんです。
しかしですよ、しかしです!
同じとは言っても、やっぱりコンサートの雰囲気は、毎回違います。いくら、同じ曲目で構成しても、どうしても同じようには進まないんですね。これがまた不思議でもあり、面白いわけです。オープニングの曲の歌い出しでの反応。ここから、だいたいその日の終わりが見えてくるんです。調子の良い日もあれば、「おお、これは手ごわいぞ(何がてごわいかは想像してちょうだいな)」という日もあります。90分間で、いかに心やからだを開いてもらえるか。絶えず、それを考えながら正面からぶつかっていくわけです。なぜなら、僕は「歌手」でもないし、「タレント」でもないし。そうです、つながりあそび・うた研究所の「研究部長(アイドル部門)」としての仕事は、ここにあるわけです!(あれ? いつの間にアイドル部門ができたんだ?)
うれしいことに、コンサート当日までに、本当にたくさんの曲を全校で歌ってくれているんですよ。その結果として僕が呼ばれるわけですが、ありがたいの一言です。「子ども達の歌うときの表情や声が、教科書の歌とはまったく違うのよ」なんていう声も耳に届きますが、こちらこそ感謝しています。今日は、忙しいのにひとつの行事としては終わらせない…というすてきな、ある小学校の取り組みのお話をしましょう。
「当日のプログラムに、この曲を入れてください。」
こんな要望が事前に入ることがあります。先日もありました。静岡県の富士市の小学校からでしたが、その曲目を聞いたときには、耳を疑いました。なぜって、その曲目が『生命歌いましょう』だったからです。CDに収録する時に、自分なりの想定をして選曲するんですが、この曲は子ども達が歌うとは考えていなかったんです。ところがその学校では、なんと全校で、今月の歌として取り組んでいるし、しかも、合唱クラブの子ども達が三部合唱で歌えると言うのです。でも、リハーサルもできないし、どんなふうに歌ったらいいのか、はたまた、子ども達の音程は大丈夫か(この合唱、かなり練習が必要なんですね)…などと心配しながらも本番となってしまいました。
ところがです。本番では予想に反して素晴らしいうたごえだったんです。僕とは一度も合わせていないのに、日頃から一緒に練習を積み重ねてきたように、3番のア・カペラの部分も実に自然なハーモニーになり、会場じゅうに響き渡りました。体育館じゅうが静まり返った瞬間でした。実は、この日は大型台風が静岡県を直撃していた日でもあったので、雨や風の音がすさまじかったのです。その音さえも、一瞬、耳には入ってこなかったように感じたのは、きっと僕だけではなかったと思います。この曲、大人が歌うのもいいけど、未来を夢見ながら、明日に生きる子ども達が歌うと、もっと豊かにふくらむなあと初めて感じました。選曲してくださった先生の鋭い視点に、感激しました。でも、これって普段から僕らが話している「生命を真中に置く」っていうことの実践なんですね。
本当は、このコンサートは台風のために中止せざるを得なかったんですが、開演時刻を一時間以上も早めて、しかも、午後の部も午前にまとめてしまい、実現させてくれました。それも、校長先生の暖かくて頼もしいバックアップがあったからこそです。子ども達の期待、先生方の取り組みをずっと見守ってくれていたんでしょうね(だって、先生方ったら、自費でおそろいのユズリンコンサート用シャツを製作していたんですよ)。
朝からてんてこまいの一日でしたが、終演後、担当の先生が
「一回にして、かえって良かったかも。だって、低学年の子ども達にも、合唱部の歌を聞いてもらえたからね。」
同感でした。もちろん、大きな学校ですから、二回に分けたほうが中味も変えられます。でも、同じ空気を一緒の時に体感するって、必要なのかもしれませんね。
ある校長先生。
「来年の三月で私は退職だけど、また、来年度も来てくださいね。もう、他の先生に中山さんを呼ぶように、伝えてあるからね。」
また、ある校長先生。
「前の学校でも、あんたを呼んで良かったよ。だから、この学校に転勤してきて、私が推薦したんだよ。」
またまた、ある学校の先生。
「クラスのある子が、ユズリンさんの大フアンで、どうしても呼んでって言うので、お願いしたんです。」
理由はどうであれ、こうして活かしてもらえる幸せをかみしめています。一人でも、何かを感じてくれる人がいれば…こう思いながら毎日歌っていますが、これからも、このことを肝に命じながら、全国を回りますね。
秋も深まり、だんだんと成長していく「アイドル部門のユズリン部長」でした。では、また。
そうそう、来年の春に、一味もふた味も変わったCDを出版します。今は、その下準備に追われていますが、すごくワクワクしています。だってさあ、いよいよ英語で歌う曲もあるんだよ〜ん。前にはさ、「Happy Birthday」の発音で馬鹿にされたけど(教育学部の英語科出身なのにさ!ふ〜んだ!)、今度はちゃんと練習しておくから期待してちょうだいな。そのうち、特典付きの新しいアルバムの話もしましょうかねえ。お楽しみにね。
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