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だから、アイドルはやめられない その1

2003年12月8日

 時間がほしい!もう一人の自分がほしい!誰かさあ、コピーロボット貸してくれないかなあ?貸してくれたら、お礼に僕のCDを貸してあげるのになあ(!?)って、いらないよね。

 もう完璧に冬ですねえ。冬に生まれた天才おぼっちゃまは、やはり冬が大好きなんです。DNAってやつに刻み込まれているんでしょう。こたつや布団で丸くなるのがいいんです。だんだんと温まっていく時間の中に、身をゆだねる。もう、幸せなひとときです。しかしですよ、コンサートはつらい!ホールならまだしも、真冬の体育館(特に二月頃)は息も真っ白だし、一度ワイヤレスマイクを握ったら、指が固まってはずせなくなるほどなんです。マイクにくっついちゃうんだよ、手が。それになんたって困るのが、指が動かないからピアノが思うように弾けないのだ!先生方や保護者のみなさんが、ありったけのストーブを持ち込んでくれているというのに、効き目なし。さすがの天才おぼっちゃまも、「冬なんかやだ〜」と泣いてしまうのでした(じゃあDNAに刻まれているのは、いったい何なんだ?)。

 この初冬、小学生のアイドル「ユズリン」が、なんと中学に行ってきました!それも二校もです。昨年の静岡放送のテレビ番組のおかげで(せいで…ではありません。おまちがえのないように)、校長先生や保護者会の会長さんにいたく気に入られて、引き受けるまで電話を切ってくれないんです。どうしようと迷いながらも、校長先生や会長さんの言葉が頭の中で鳴り響くんです。
「本当に良いものを子ども達に届けたいんです…。」
この殺し文句!でも、自信がないので「どうなってもかまわないと言うのなら行きます。」とこちらが言うと、
「どうなってもかまいません。」
ここまで言われたら、挑戦するしかありません。そんな言葉に励まされ、僕も少しずつでいいから自分の世界を広げてみようと、引き受けたのでした。ちょうど10周年を迎えていたし、過去にもやったことあるしね。

 しかし、一校目、気負いすぎてしまいました。
 無理にのせようとしたのがまちがい!中学生と言ったら、なんとも難しい年頃。そんなに簡単に心を開くわけないでしょ、周りの目が一番気になる年代だものね。自分を振り返れば容易に分かる事なのに、ついつい、小学校でのコンサートのイメージを持ち込みすぎてしまい空回りです。終了後、自分に付けた点数、というか達成度は15点。もちろん、一所懸命やったんですよ。まあ、おぼっちゃまの限界だったんでしょうね。しかし、ダンスで手伝ってくれた友達が話してくれたんです。「中学生ね、ちゃんと話を聞いてたよ。“先生”を歌った時に、顔つきが変わったよ。もっと、中山さんの思いを話した方がいいよ。」 ありがたい仲間ですよね。人間って、欠点をつかれるよりも、ちょっとでも良かったところをこうして認めてもらえると、本当に救われます。次につながる意欲をくれるんですからね。

そう言えば、前列の一年生女子は、手拍子や手話こそいっさいしなかったものの、目は僕をずっと見ていて、だんだんおだやかな表情になったものなあ。最後には、笑ってくれたっけ。

 さて、反省を元に(こんな僕でも反省するのだ!)挑んだのが二校目。心は決まっていました。無理にのせようとしないって。歌とそこに込めた思いを話していこうって。助かったのは、近所の小学5・6年生が参加してくれていたことです。「笑顔がかさなれば」や、「きみとぼくの間に」、「少年少女冒険隊」では大活躍でした。
 さあ、後半です。自分の中学生時代を思い出し、大人の矛盾点も話しながら歌った「だけどみんなここに生きている」、受験制度の問題点も指摘しながらの「勉強しましょ」、おぼっちゃまを育ててくれた祖父の言動・勉強よりも体が大事だから早く寝なさい・を話しながらの「いやになっちゃうな」、小学生時代の先生がくれた言葉の暖かさを紹介しながらの「とっておきの一人」、毎日子ども達のために、本当に努力している先生方に贈る「先生」、憲法九条が大好きな理由も話しながらの「そしてぼくらは地球」。最後は、今いちばんみんなと分かち合いたい「きみがぼくの“元気”」。この時にね、たった一人だけど、中学一年生が前に出て、元気をくれる人を話してくれたんですよ!彼は言いました。「祖父母と、インターネットで知り合った友達」だと。父母と出なかったので、きっと事情があると思い、そこは訊きませんでしたが、いろいろと考えながら語ってくれる彼の一言、一言に12〜3年の人生の重みを感じたのでした。そうだ、三年生担任の男の先生にも訊きました。その応えは「三歳になる息子とのけんか」だそうです。そこでストレスを発散しているとか!でも、愛情を感じる答えでした。

 終了後です。着替えて帰ろうとしたら、二年生の男子二人がずっと、寒い外で待っていてくれたんです。野球部とサッカー部の子です。僕に手をさしのべながら言ってくれたんです。
「感激しました。」
 その目はきれいでした。言いたい事がそこに映っているような瞳です。あまりにもまぶしくて、見られている僕の方が恥ずかしくなるほどの輝きでした。彼が感激してくれた事、それは具体的には何わかりませんが、ユズリンの存在する意味を認め、励ましてくれたことだけはまちがいありませんでした。手紙を出しますと話してくれたので、きっとそのうち届くと思います。また、届いたら差し障りのない程度に紹介しましょうね。


… 背負いきれば身軽になる。
 腹をくくれば力が出る …

この夏、読んでいた本の言葉です(富田富士也著『いろいろあるね 人生だもん』)。それを実感した中学校コンサートでした。きっと、背負いきって腹をくくることができたら、こんなユズリンでも、中学生のアイドルになれるかも!? さあ、弱音をはきながらも、天才おぼっちゃまの挑戦はまだまだ続くのでした!