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SBSラジオ「ユズリンの音楽日記」
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やっぱり、アイドルはやめられない

2003年11月16日

 ああ、冬です。
誰がなんと言おうと冬です。え、この出だしはすでに三回目だって? そうかあ、うっかりしてた。では、最初からやり直しを。

 うわぉ、冬だぜベイビー!
誰がぬわんてったって冬だぜ、イェ〜イ!ノッてるかい?

 というわけで、多少壊れているユズリンですが、「疲れているんだね、かわいそうに」と思い我慢してくださいな。というのはですね、たった30分の出番なのに、もうくたびれ果ててしまったコンサートがあったのです。そして、それはきっとこれからの人生で忘れる事のできない一日に違いありません。

『第39回民間放送教育協会 全国大会in静岡』。
11月7日に開催されたこの大会。午前は『声に出して読みたい日本語』の著者・齋藤孝さんの講演、午後は女優の岸本加代子さんや司会者の山本文郎さんらのパネルディスカッション。僕はその間の昼食後の30分というわけです。なに?たった30分なのにどうして疲れたかって? もう、怒る前に聞いてちょうだいな。まずはね、その前日です。静岡県の磐田市の小学校で2ステージ歌ってきたんです。ほんで(それで)静岡市に夜入ったら、すぐにリハーサル。ホテルにチェックインして休む間もなく、東静岡駅前のグランシップに移動です。いつものごとく、音さえ決まれば終わりかなと思っていたら、なんと当日のカメラ割があるからひととおり全部やってくれと言うんです。本当なら、え〜っ、やだも〜ん!って叫びたかったおぼっちゃまでしたが、日頃お世話になっているSBS静岡放送のみなさまが笑顔で僕を待っていてくださったんです。ほら、昨年僕の番組を制作してくれているでしょ?ラジオにも出させてもらったしね。カメラマンとも友達になっているし。だから、ほとんどの方は僕の事を知っているんですよ。顔も性格も!だから、笑顔で取り巻いてくださったんです(逃がさないぞって!?)。
でもさあ、僕は知らない方もいるわけ。「あ、ユズリン。待っていましたよ」と迎えられて、笑顔で「どうも〜」と応えても、心の中では「あ、あなたは誰?」という状況。これだけでも萎縮しているのに、あの、あの、すてきなディレクターのSさんが、「ユズリン、本番どおりに全部やってね」なんて、満面の笑みをたたえながら優しく優しく言うんです。こりゃ、いくらわがままなおぼっちゃまでもやらざるを得ません。一曲ごとの語りもダンスも(だってさ、局の人が二人、何も知らないのに汗だくになって、僕の横で真似して、当日の子ども達の代わりに踊ってくれるんだよ。こりゃ、こっちも真剣になるよね。って、ずっと僕は笑ってしまっていたけど)。そんなわけで、声はいつにも増してガラガラさ!

そして迎えた本番。
僕も齋藤孝さんの講演を聴きたいなと思い、会場に入ったんです。その瞬間、目が点になってしまいました。だってさ、だってさ、すわっているのは大人だけだし、それも怖そうな顔をしたおじさまばかり!(僕から見ての“おじさま”さ!想像できるでしょ)ネクタイに背広。コロンやオーデコロン、はたまた、整髪料の匂い(香りと表現すべきか)が入り混じっている密室に近いホール。しかも、全国のテレビ局のおえらいさんばかりとか・・・。もう威圧感たっぷりで、齋藤さんの話を聴く気にもなれずロビーへ逃れて、そこのモニターテレビを呆然と眺めていたのでした。

ただ、一般参加のお母さん方やおじいちゃん、おばあちゃんがいたことと、僕のステージを手伝ってくれる小学生の子ども達がいてくれたのが救いでした。とにかく、昼ご飯も喉を通らず、一人控え室で震えていたか弱いおぼっちゃまだったのです。

本番前、久しぶりに思いました…「帰りたい」。
舞台の袖にいる僕の心臓はバクバクです。そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、紹介ビデオが映し出され、オープニング曲『スタートライン』のイントロが流れ出してしまいました。ステージに足がつかないまま、とうとう開演です。案の定、声は上ずってしまい、アイドルキラキラ光線が出せませんでした。ところがです、もういつものようにやるしかないと腹を決めて進めたら、「ユズリ〜ン」としぶい声を出してくるし、さらに予想に反して、『笑顔がかさなれば』では会場中が手つなぎをしてくれたんです!“おじさま”方も、なんてかわいいんでしょう。隣のおじさまと恥じらいながらも、手と手をつないで高々と挙げてくれるではありませんか。ようやく、アイドル「ユズリン」のペースをとりもどしつつ、調子が出始めた頃にはあっという間に終盤に突入したのでした。

実はこの日、僕は自分との闘いがありました。
それは、自分の大事にしたい事をきちんと話せるか…ということです。というのはね、目の前の席には、文部科学省や総務省の方々がすわっていたんです。元教員の僕にとっては、ついびくびくしてしまうような存在です。見るとはなしに、どうしてもその人に目がいってしまいます。他の“おじさま”方は、すでにアイドル「ユズリン」の魔法にかかったようですが、この方々はあくまでも冷静。なかなか笑ってくれないし、手もつないでくれません(でも客観的に見たら、その方々が手をつなげるような関係ではないのかも)。そんな状況の中、歌いましたよ『先生』を!もちろん、生命を真中に置くことが一番大事、戦争はいやだと話しながらね。あの方達に何か伝わったらいいんだけど。どう思ったかなあ? やっぱり「ユズリンってかわいいな」って思ったかなあ?って、そうじゃなくって!(ああ、一人突っ込みとボケは大変…)
そんなこんなで、緊張の30分があっという間に過ぎ去ったのでした。その夜のビールは効きました。はい、もう酔いが回りまくってしまったのでした。

とある小学校で、コンサートも終わり先生方と職員室で話していました。そうじの時間になり、2年生の男の子がずっと窓の向こうから呼んでいたんです、僕を。わかってはいるものの、先生方との話が盛り上がり、ついつい後でね…という雰囲気になってしまいました。そんな彼、音響さんにぼそっと「あ〜あ、ユズリン、こっちを向いてくれない」とつぶやいたそうです。「ユズリンさあ、今、先生方と話していて忙しいんだよ」と音響さん。「だってさ、ぼく、ユズリン好きなんだもん」と彼。音響さん、よせばいいのに質問したんです「ユズリンのどこが好きなの?」って。するとその彼、はっきりと、きっぱりと答えたそうです。「だってさ〜、ユズリンってかわいいんだもん。」

イェ〜イ、やっぱねえ!小学生の心をがっちりつかんで放さないユズリンの魅力!なんだか、ますますアイドルとしての使命感に燃えてしまう、おぼっちゃまなのでした。あの7日のコンサートの疲れも、一気に吹き飛び、美しい夕焼けの中、一人つぶやきながら家路につくおぼっちゃまなのでした。
「やっぱり、アイドルはまだまだやめられない!」