コンサートなどの依頼、様々な形で入ってきます。そして、その時期もいろいろです。学校コンサートだと、学校行事を編成する頃(2月でしょうかねえ?)からだし、半年前ぐらいがいちばん多いのでしょうかねえ。ゆずりんか警察音楽隊かというのもあったし、学校コンサートをやり忘れていたからというのもあったなあ。これはつらい。だって、三学期だからね。寒くて指が動かなくて、さあ大変。それに息も真っ白。ストーブを体育館じゅうに準備してくださっているというのに、効果なし。ワイヤレスマイクを握ったら最後、手が開かないのです。これ本当だよ。
そうそう、直前というのもあったっけ。それも、日にちと時間の指定!午後にはコンサートが入っていて、移動を考えると本当は受けられない仕事でしたが、熱意に負けて午前中に引き受けてしまいました。が、なんと、8時半からが本番!当然、リハーサルは7時半前・・・!
声も寝起きできついのですが、気分を高めるのに一苦労。しか〜し、やっぱり子どもたちのおかげですね。上手に僕をのせてくれて、すぐに楽しくなっちゃいます。毎回思うのですが、コンサートって授業と同じで、相乗効果なんですね。
さて、今回、ある保育園のコンサートにうかがいました。
これが一年も前からの約束。園長先生は、僕を教員時代から知ってくださっていて、なんとしてもコンサートを・・・と熱意いっぱいの先生なんです。その頃に一緒に歌い踊った「少年少女冒険隊」を忘れられませんという愛情に満ちあふれたラブレターを読んでいると、行かないわけには行きません。そりゃ、日程やら予算やら解決しなければならない問題はあるんですが、なんといっても人間は「情」ですよね。今回も「情」にほだされて、無事に困難を乗り越えて実現することができました。
小雨降る寒い一日でしたが、そんな寒さもなんのその。熱気に包まれたコンサートになりました。歌も歌ってくれていて「きみとぼくの間に」では、すぐに歌いながら手話もしてくれるし、「少年少女冒険隊」が流れれば、「やったー!」という大歓声と共に立ち上がり踊り始めます。園では歌ったことのない「きょうも元気!」も、すぐに覚えてしまうという音感の良さ。幼い子どもたちの感性はみごとです。
その中で、目が点になってしまうできごとが起こったんです。
というのは、「きみがぼくの“元気”」を歌い始めたら、先生にまじって一人の女の子が踊り始めたんです。年長さんは恥ずかしくて前に出てこれないというのに、その子は横目でこっちを盗み見しながら、みなさんの前に出て上手に踊るではありませんか。もう、全員の目は、その子にくぎ付け。歌っている僕なんか存在感はなく、それこそCDでも良かったほどです。あとから聞いたら、なんとその子は2才!どうして、2才の子が「きみ元」を踊れるの?完璧に脱帽でした。
お調子者のゆずりん、思わずその子に言ってしまったのでした。
「一緒にコンサートにまわらない?」
そんなコンサートを企画した園長先生が、お礼のあいさつをしてくださいました。話すうちに、園長先生のつぶらな瞳から、大きなきれいな涙があふれてくるんです。
「私はね、今日、みなさんが親御さんも一緒に、少年少女冒険隊を踊ってくれたでしょ?もう、うれしくてうれしくて、涙が出て仕方なかったの。なんでって、私はね、ユズリンのことを私が若い時から知っているのよ・・・。その時から、すてきな曲だなあと思っていて、その曲を今またこうして、みんなが良い顔して踊っている。感激です。」
涙ながらの園長先生の言葉に、会場じゅうがもらい泣きです。もちろん、僕も、泣 いてしまいました。本当にうかがって良かったなあと、感謝と感激に身を任せていました。
でもね、ちょっと待って。ふっと我に返ったら、あれえ?と感じ始めたんです。な んか、変だぞって。それは、園長先生の言葉!お礼の言葉よ!
「私が若い時から知っているんです。」
ってさあ、なんだか僕の方が人生の先輩みたいでしょ?う〜ん、微妙な心境・・・。喜んでいいのやら、悲しむべきやら? ま、いいか。確かに、12年前の曲だしねえ。ゆずりんも、立派に成長しました、はい。
さらに、帰りがけに、2才の女の子のご両親が一言。
「近いうちに、契約書を作成して持ってきま〜す。」
ありゃりゃりゃりゃ・・・。
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